危うく詐欺に遭いそうになりました

業者を狙った詐欺電話に遭いそうになった実体験の注意喚起アイキャッチ画像

― 業者を狙った新しい手口と思われる電話の話 ―

今回は、弊社が実際に詐欺に巻き込まれそうになった出来事について書きたいと思います。
いわゆる「オレオレ詐欺」とは少し違い、建築業者・工事業者を狙った新しい手口ではないかと感じたため、注意喚起も兼ねてまとめておきます。

結果的には被害はありませんでしたが、一歩間違えば…というところまで進んでいました。


① 1月某日|外壁塗装の見積もり依頼の電話

市内の実在する介護施設(以下、介護施設)の「中田」と名乗る人物から電話があり、外壁塗装の見積もりをお願いしたい、という内容でした。

・中田
・電話番号:090-****-7390

・予算は 1,000万円〜2,000万円
・相見積もりは取らない
・御社だけにお願いしたい

という話でした。

さらに、その前提として

・以前この施設の改修工事を担当していた工務店が廃業してしまったこと
・その工務店から「とても評判が良い会社だ」と弊社を紹介されたこと
・その話を聞いて「ぜひ御社にお願いしたい」と言われたこと

も説明されました。

▶ この時の内心
実はこの時点で、ひとつだけ引っかかっていたことがありました。

それは、この日が祝日だったにもかかわらず、企業側から見積もりの問い合わせをしてきた という点です。

施設関係の工事とはいえ、通常であれば平日に管理会社や担当部署を通して連絡が来ることが多く、
「祝日に、いきなり業者へ直接電話をしてくるだろうか?」という違和感が、今思えば最初の引っかかりでした。

とはいえ、その後の話があまりにも具体的で、
正直なところ、「ずいぶん話が良すぎるな」とは思いましたが、施設名も具体的で、話し方も落ち着いていたため、完全に疑うところまではいきませんでした。

また、「以前工事をしていた会社からの紹介」「その方が評価してくれている」という話を聞き、
実はこれは弊社でも ときどき見られる流れ でもあります。

今回の工事は、弊社としてはやや規模が大きく、本音を言えばお断りしたい気持ちもありましたが、
「紹介と言われると無下にはできない」「ここは請けるしかないかな」という思いが働いていたのも事実です。

今振り返ると、そうした 業者側の心理をよく理解した上での話の組み立て だったのかもしれません。


② 翌日|工事と関係のない相談

翌日、再び電話があり、

・代理店を通さないと購入できない消毒液が必要であること
・国からも早急な消毒対応を行うよう指導されていること
・そのため、消毒液を早急に手配する必要があること
・取引先とトラブルがあり、通常のルートでは購入できないこと
・代理で購入してもらえないか

という相談をされました。

消毒液については、

・ある程度まとまった数量を希望していること
・1本あたりに一定の金額が設定されていること

が伝えられました。

▶ この時の内心
ここで「ん?話が変わってきたぞ」と感じました。

ただ、「工事の見積もり依頼が先にある」「施設で感染症が出ていて困っている」と言われると、断りにくい心理が働いてしまいます。

社内で確認のうえ、「基本的にはこういったことはやっていないが、今回限りなら」と伝えてしまいました。

なお、この前後で中田と何度かやり取りをしており、その際には

・中田側では、
 こちらが仕入れる金額より 高い単価で購入する前提 になっており
・その 差額分を弊社の取り分として考えて良い という話
・「今後も継続してお願いしたい」との話

も出ていました。


③ 個人で販売している人物を紹介される

消毒液は「個人で販売している中村という人から買える」と言われ、連絡先を伝えられました。

・中村
・電話番号:090-****-5079

その後、こちらから電話をして、消毒液をまとまった数量で注文する流れになりました。

具体的な金額はここでは控えますが、
この時点で もし支払いまで進んでいれば、想定される被害額は約130万円にもなる規模 でした。

▶ この時の内心
今思えば、ここが一番危なかったと思います。

「差額分は弊社の取り分でいい」「今後も継続してお願いしたい」という話が出たことで、
気持ちのどこかに 『仕事として成立しているのでは』 という油断が生まれていたと思います。

・法人ではなく個人
・振込の話が出てくる流れ
・工事とは全く別の取引

冷静に考えればおかしいのですが、流れの中で判断してしまいました。


④ 「とにかく急いでいる」と何度も電話

その後、

・施設内でインフルエンザが発症している
・今日中にどうにかならないかと言われる
・とにかく急いで消毒液が必要だと強調される
・何度も電話がかかってくる

という状況になりました。

不審に感じ、「直接会って話がしたい、もしくは正式に契約書を取り交わしたい」と伝えたところ、
「発注書を送るので安心してほしい」と言われました。

▶ この時の内心
「急がせる」「考える時間を与えない」
これは詐欺の典型的な手口です。

ここで一気に怪しさが強くなりました。


⑤ 発注書を確認して強い違和感

夕方、現場から戻って発注書を確認すると、

・印鑑や表記がおかしい
・内容に不自然な点が多い
・実在する施設の正式な書式とは思えない

特に決定的だったのは、次の点でした。

・押されていたのが角印で、文字を読み取ると 「鹿島神宮之印」 と書かれていたこと
・連絡先の電話番号が フリーダイヤル になっていたこと
・弊社の住所が 誤った内容で記載 されていたこと
・電話では「中田」と名乗っていたにもかかわらず、メールの送信者名が tanaka taro という個人名だったこと
・メールアドレスが Outlookのフリーメール で、
 通常あるはずの 介護施設の公式ドメインではなかった こと

これらを確認した時点で、
「これは間違いなく詐欺だ」と確信しました。

なお、押印されていたのが「鹿島神宮之印」という角印だったことについては、
おそらく特別な意味があって使ったというよりも、
「それっぽい角印なら何でもよかった」 のではないかと感じています。

ただ、その“何でもいい角印”として、
鹿島神宮という神聖な場所の名前が使われていたことには、
個人的には強い違和感を覚えました。

罰が当たるのではないか、と感じてしまうほど、
軽い気持ちで使っていいものではないと思います。


⑥ 実在施設に直接電話して確認

それまでは中田の携帯電話とやり取りをしていたため、不審に感じ、介護施設の代表電話へ直接電話しました。

すると、

・「中田という人物はいない」
・「同じような電話が何件も来ている」
・「詐欺の可能性が高い」

という話でした。

▶ この時の内心
背筋がゾッとしました。

「やはりそうだったか…」と同時に、
ここで止められて本当に良かったと思いました。


⑦ 最寄りの警察署へ相談

その後、一連の経緯を最寄りの警察署に報告しました。

状況を説明すると、担当の方が 30分ほどかけて丁寧に話を聞いてくださいました。

警察からは、

・着信拒否をする
・「警察に相談している」と伝える

というアドバイスを受けました。


今回の件で感じたこと

今回の件を振り返ってみて、もう一つ大きく感じたのが 当時の業務環境 です。

電話を受けた担当者は、たまたま両日とも 会社の固定電話からの転送を受けて、
携帯電話で対応している状況 でした。

特に2日目については、本人も現場で作業をしながらのやり取りとなり、

・相手の電話番号をその場で調べる
・会社名や施設名を落ち着いて確認する
・パソコンで情報を検索する

といった、
事務所やデスク前であればできたはずの確認作業ができない状態 でした。

その結果、
「少し待って確認する」という余裕が持てず、
話だけがどんどん先に進んでいくような感覚 になっていたのだと思います。

そうした環境面も含めて、
今回の手口はよく考えられていたと感じました。


今回の件で感じたこと(続き)

今回の手口は、

・実在する施設を装う
・高額工事の見積り話で信用させる
・業務外の「代理購入」を頼む
・個人名義で金銭が動く
・とにかく急がせる

という、企業や業者の善意や立場を逆手に取った、非常に巧妙な方法だと思います。


同業者の皆さまへ

・工事と関係のない金銭の話が出たら要注意
・実在施設でも、必ず公式連絡先に確認
・「急いでいる」は一度立ち止まるサイン

少しでも「おかしいな」と感じたら、一人で判断せず、周囲や警察に相談することが大切だと、今回強く感じました。

なお、ここまでが 数日間にわたる出来事 ですが、
その翌日にも「中田」を名乗る人物から電話がかかってきました。

こちらは電話に出ませんでしたが、
ここまで連絡が取れない状況が続けば、
さすがに相手もこちらが異変に気づいたことを察したのではないかと思います。


※なお、相手が使用していた電話番号については、後日インターネットで調べたところ、
全国各地で同様の内容の電話があったという口コミが複数確認できました。
同じような事案が地域を問わず発生している可能性があるため、
同業者の方は十分にご注意ください。

※参考:電話番号情報サイト(外部サイト)


※警察庁でも、電話を使った詐欺や手口の巧妙化について注意喚起が行われています。個人だけでなく、事業者や業者も被害に遭うケースがあるため、あわせて参考にしてください。

・警察庁「特殊詐欺対策」(外部サイト) https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/